遺言の主な役割は、自分の死後に財産をどのような形で残したいかを文書によって意思表示する遺族へのメッセージです。
遺産相続において遺言書があれば、相続は遺言書の記載内容が優先されるので、相続争い(争続とも呼ばれます)などのトラブルを未然に防ぐことが出来るのです。

メリットその1
相続人を選ぶことが出来る   
<どの財産を><誰に><いくら>相続させるかという指定が出来ます。   
おおざっぱに「4分の3は妻に相続させる」のような指定方法も可能ですし 、「◇◇市の土地と建物は長男に相続させる」のように細かく指定すること が出来ます。   
また、相続人以外の人に遺贈することも出来ます。たとえば、事業を営んでいる方が娘婿(相続人ではない)に事業資産(株式など)を承継させることが出来ます。   
また、孫に学費を残しておきたいという場合にも遺言は非常に有効な手段といえます。

メリットその2
遺産相続トラブルを回避出来る   
有効な遺言書があれば、相続の方法はその遺言書の記載内容が優先されます。よってご遺族の方が互いの権利を主張しあってご遺族同士の無用な争いを避けることが出来ます。

メリットその3
相続手続きがスムーズ   
遺言書の記載内容に従って相続手続きを行うのですから、相続人全員で何かの合意が必要な場面を極力減らすことが出来ます。   
また、遺言書の中で遺言執行者を定めておくことが出来ます。この遺言執行者は遺産相続手続の事務管理者と考えていただければ良いです。   
相続人の方が遺言執行者になることが出来ますし、司法書士のような法律家が公正な第三者として遺言執行にあたることもあります。   
なお、当事務所で遺言書作成サポートを依頼された場合、遺言執行者   への就任業務を行っております。

 

◆◆形式要件を整えること◆◆

 特に自筆証書遺言については、全文と日付、名前を自署して押印するだけで証人もいらず非常に簡単なように感じますが、その簡単さがゆえに形式不備で有効・無効が争われるケースが少なくありません。

①自書すること  
遺言の全文・日付・氏名の記載全て例外なく自分で手書きすること。  
代筆、ワープロ、ビデオ、録音では遺言できません。文字を書くことが困難な状態の場合は、自筆証書遺言の作成をあきらめた方が良いかもしれません。 添え手の補助も争いが生じる原因となる恐れがあるので、やはり遺言者が自力で文字を書くことができない、もしくはそれに近い状態の場合は自筆証書遺言の作成は難しいと言わざるを得ません。  
特に、遺言者と同居している親族に有利な遺言を書いている場合、同居していない親族から遺言は偽造されたのではないか?と指摘されるかもしれません。

②日付は正確に書く  
「平成19年5月吉日」「平成19年5月」という記載では、日付の記載がないものとして遺言全体が無効になります。  
「平成19年の誕生日の日」などという記載ならば大丈夫と書いてある書籍を散見しますが、これは学説上の話ですので、やはり日付は「平成19年5月○日」と正確に記載すべきでしょう。また、誤記を防ぐためにもアラビア数字を使用することをお勧めします。

③割印を忘れない  
遺言書が数葉にわたる場合に、遺言書が1通の遺言書と確認できるようにホッチキスなどで留めた場合も全ページにわたって割印を忘れずにしましょう。遺言の中で不利な扱いを受けた相続人は、僅かな欠陥でも指摘してきますから、たかが割印とは考えない方が良いですね。

④押印を忘れない  
民法では遺言書への押印を要求していますから、この押印を忘れてしまうと遺言書の有効性が問題となります。実印の使用まで要求されてはいません。裁判例では拇印・指印でも良いという判例がありますが、争いを予防するため認め印で構いませんから、しっかり押印しましょう。

◆◆その他の形式的部分でのアドバイス◆◆

①ボールペンや万年筆を使うこと  
鉛筆やシャープペンシルなど、消しゴムでいくらでも補正できるような筆記用具を使うと争いの原因となりますから、消しゴムを使って消すことの出来ない筆記用具を使いましょう。  
また、鉛筆を使用すると下書き・草案なのか? それとも本物か?という疑義が生じますので、鉛筆等の使用は避けた方が良いでしょう。

②間違ったら最初から書き直す  
遺言書の訂正方法は民法968条2項で定められています。この方式に従わない訂正方法では、遺言の内容について争いの原因になります。以下に民法968条2項の条文を掲載しますが、これを読んで訂正方法を理解できる方はあまりいないと思います。  
訂正方法の有効性に争いが生じる恐れを回避するならば、面倒でも最初から書き直した方が良いのではないでしょうか。

※民法968条2項  
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

③封筒に入れて封をする  
自筆証書遺言は、秘密証書遺言と異なり封筒に入れて封をしなくても遺言としては有効です。しかし、封をしておかないと遺言を発見した人が他の相続人から、遺言の中身を改ざんしたのでは? というあらぬ疑いをかけられてしまう恐れがあります。  
裁判所での検認手続まで遺言の内容がわからないようにするため、封筒に入れて封をしておくと良いでしょう。また、遺言書の押印に使用した印鑑と同一の印を封筒の封印に使用するとなお良いです。

④遺言書は1通のみにする  
遺言書は何通でも書くことができますし、何回でも書き直すことが出来ます。  
しかし遺言が何通もあると、その内容が特定の相続人にとって不利なことが書いてある場合、その遺言の有効性が争われる可能性もあります。  
遺言は、書く人の意思を示す最後のメッセージです。何通も作成すると混乱を招く可能性が増えますから、メッセージは1通にまとめることが無難といえましょう。

 

①曖昧な表現はしない  
遺言の目的・内容が不明確な場合、これを明らかにする必要があり、この遺言の解釈について争いが生じる恐れがあります。争いが生じた場合は、最終的には裁判所の判断に委ねなくてはなりません。  
また遺言の解釈に争いが生じていなくても、不動産の相続手続(登記手続)については、遺言の内容が曖昧な表現だと、遺言どおりの登記を実現することが出来ない場合がありますのでご注意下さい。

良い例   
●A不動産を相続人甲に「相続させる」   
●A不動産を相続人甲に「遺贈する」   
●A不動産を相続人甲及び乙に各2分の1の割合をもって「相続させる」

悪い例   
●A不動産を相続人甲に「与える」「取得させる」「譲渡する」     
これでは相続なのか? 遺言による贈与(遺贈)なのか? 判断がつきません。   
●A不動産を相続人甲及び乙に「相続させる」     
複数の人に財産を帰属させる場合は、かならず持分割合を記載すべきです。

②「家」制度は廃止されています  
日本の風習・伝統的な考え方で「家」の制度があります。旧民法の時代ですと、この考え方がありましたが、現行民法では「家」と言う考え方は取り入れられていません。
よって家督相続という制度はありません。  
しかし法律がどうであれ、「家」を継ぎ「姓」を絶やしたくないという心情をお持ちの方も多いでしょう。また、姓を継いだ人に財産を残したいという気持ちを持っていらっしゃる方も多いのでは?  
しかし「家」制度を念頭に置いて遺言を書いたために、その遺言が無効と判断されかねない場合がありますので注意が必要です。以下に遺言が無効とならないようにする遺言作成の技術をご紹介します。   

(1)法定相続人はいったい誰なのかをリストアップする   
(2)相続人には「相続させる」という言葉を使う   
(3)相続人ではない者には「遺贈する」という言葉を使う   
(4)「誰に」「何を」相続又は遺贈させるかを具体的に表現し、省略表現は避ける   
(5)全てを遺贈するときは「包括遺贈する」という言葉を使う
 

実は、以上の5点を守ると遺言の無効を回避できる場合が多いのです。ただし、具体的な内容によっては他の相続人から遺留分の請求を受けて遺言の内容を完全に実現することが出来なかったり、公序良俗に反して無効になったりする場合がありますので、詳しくは専門家に相談する必要があります。

③財産の表示は具体的にする  
遺言の効力の発生は「遺言者死亡の時」です。遺言者自身は自分の財産状況を一番よく知っていますから、遺言を書くときには気付かずに、財産の表示を中途半端に表現してしまったことが、遺言の効力発生時に問題となる場合があります。  
それは、遺言の内容を実現する人(遺言執行者など)は、遺言者の財産を全て把握できるとは限らないという事実です。  
遺言執行者が相続人以外の第三者である場合や遺言執行者がいない場合でも、遺言者と同居していない相続人がいる場合に、遺言者と同居している相続人が遺言者の財産隠しを図る可能性 があります。 また、遺言執行者は遅滞なく「相続財産目録」の作成が義務づけられていますから、遺言書に具体的な財産を表示しなければ、遺言の内容の実現に支障をきたす場合があります。   

●不動産の場合     
→登記事項証明書の通り記載する   
●預貯金の場合     
→金融機関名・支店名・預貯金の種別を記載する           
(出来れば口座番号も特定すると争いを防ぐ効果が増します)   
●有価証券の場合     
→有価証券の種類・数(金額)を記載する   
●自動車の場合     
→車名・ナンバー等 自動車登録の内容がわかるように記載する   
●その他の動産(高価な動産の形見分けでの争いを予防します)     
→動産の種類・色・保管場所・原材料・大きさや製作者などで特定する

④遺言執行者は第三者に依頼する  
まず、遺言執行者が当初からいない場合の遺言の実現方法ですが、利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任することになり、この選任を受けた遺言執行者が遺言の内容を実現してゆくことになります。  
しかしこれでは面倒です。そこで、遺言の中で遺言執行者を決めておけば直ちに遺言の実現に向けた行動をとることが出来ますから処理の手間が省けます。  

遺言執行者を相続人や利害関係人の中から選任した場合、遺言の内容についておもしろくない相続人等より執行に関してあらぬ疑いがかけられたり、遺言執行ついていたずら程度の妨害をされることもあるでしょう。  
これらを回避するには遺言執行者を公正な手続を行うことが出来る、第三者に委託した方が良いのではないでしょうか。遺言の執行手続きがスムーズに進みます。  

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