民法で定められた法定相続分という相続割合があります。遺族間で争いを避けるために法律で定めされたとおりの割合で相続することが一番公平でかつ争いが起こらない方法なのでしょうか?  

あくまで私見としてですが、法定相続では不平等が起こる考えております。遺産相続は、財産だけではなく、亡くなった方(被相続人)の想い(心)も相続し、かつ、相続人相互間の人間関係にも深く関与します。
単純に割合だけでは決めにくい部分が必ずあるはずだからです。

①遺産の種類とその平等相続  
遺産は、    
●不動産    
●動産(高価なものに限らず)    
●有価証券    
●預貯金    
負債(借金)  など様々な内容を含んでいます。  
分割できる財産(預貯金など)だけなら良いのですが、大抵の遺産には共同で所有すること自体が、後に面倒を引き起こすものもあります。  
これが故に、民法で定められた法定相続分どおりに分けて相続することは困難といわざるを得ません。

②法定相続後の手続きの煩雑さ  
法定相続したため、かえって後々の手続きが面倒を引き起こすこともあります。    
事例)     
●手続きに相続人全員の印鑑証明書を必要とすることがある     
●手続きに相続人全員の署名が要求されることがある     
●手続きに相続人全員の戸籍謄本が要求されることがある     
●権利を行使するたびに相続人全員の決議や過半数の決議が必要          
(この場合、証明書類を別途作成する必要があります。)
●手続費用の負担をその度に話し合わなければならない

③祭祀承継問題 (特に法要費用の負担)  
相続は、財産や負債の承継だけでなく祭祀の承継にも大きく影響します。  

ところが民法ではこの祭祀の承継は「慣習に従う」「慣習不明の時は家庭裁判所が定める」としか規定していません。なんともいい加減なものです。これでは慣習に対する遺族それぞれの考え方や理解が違った場合の対処が出来ません。  

例えば法要を執り行う際の費用負担はどう考えればよいのでしょうか? 平等なはずの法定相続をしたために、祭祀について話し合わなかった結果、後々に以下のようなことが起こり得ます。

◆長男(法要を執り行う人)
毎回のことだが、費用負担は馬鹿にならない。自分は年金暮らしだし、法要で貯金を削ると、将来の自分や妻の入院・介護費用が不安だ。かといって自分の子供たちに負担を求めるわけにもいかないし・・・

◆次男
法要の費用は常識から言って長男が負担するに決まっているじゃないか。それにうちの子がやっと社会人になって、これからは教育にかかっていた費用を老後の蓄えにしなきゃならないんだ。費用は負担できないね。

◆三男
法要の費用は兄さん方が負担してくれよ。うちはこれから二人の子供の大学進学があるんだ。負担は出来ないよ。

◆長女  
法要の費用は長男が負担するものでしょう。それに私はもう▲▲家から○○家に嫁に行って他人様なんだから。自分の親の法要とはいえ、今の○○家の法要費用負担しているんだから、▲▲の氏を継いでいる3人が負担すれば一番平等よ。  

これでは、長兄はたまったものではありません。  
常識・子供の教育費用・もう嫁に行った・・・など、様々な理由で法要の費用負担を拒まれる場面が出てきます。もちろん、上記のようにはっきりと言われるような場面は少ないです。  
むしろ兄弟間での話ですから、相手を傷つけないように遠回しな言い方をしてくることが多いので、かえって費用負担を求めづらくなってしまいます。  

まして「常識」を盾にされると返す言葉が見つかりません。しかし、こういった場面で使われる「常識」という言葉は冠婚葬祭や人付き合いの礼儀とはかけ離れています。  「常識だから〜」「常識から言えば〜」という本当の意味は「自分に一番都合の良い方法は〜」と読み替えできます。  

さて、兄弟姉妹仲を悪くしないためには・・・・   
●何も言わないこと?   
●誰か一人が負担すれば丸く収まる?
                               これでは、平等とはいえません。

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法定相続では不平等が起こってしまう場面があります。この問題を解決する方法は「遺産分割協議」を行うのが最良の手段と言えます。

★遺産分割をした方がよい場合★

遺産分割とは、総合的見地から各遺産の価額、種類・各相続人の負担等を考慮の上、相続人全員が納得できる遺産分けをする手段です。以下のような場合に行うのが有効といえます。  
なお下記は典型例にすぎません。皆様の相続においては個別具体的に検討する必要がありますので参考程度にとどめて下さい。  

●特定の相続人が負担をする必要のある場合      
(法要の実施、介護、借金の負担など)  
●事業の承継がある場合      
(会社の株式を特定の相続人に相続させる必要性など)  
●遺産である不動産を保有し続ける場合      
(二世帯住宅、賃貸用不動産がある場合などが典型例)  
●遺産である不動産を近々売却する場合      
(手続きを相続人の一名に集約させることが出来ます)  
●相続人の中に金銭的に困っている人がいる場合      
(事業の失敗、生活保護受給者、離婚で生活費困窮など)  
●遺産増加に特別に貢献した人がいる場合      
(寄与分の協議とも呼ばれます。)  
●生前贈与があった場合      
(協議中に贈与額を明確にすることで、平等な遺産分けが出来ます)  
●相続人に未成年者がいる場合      
(教育費用などを確実に確保する必要性がある場合)  
●相続人に行方不明者がいる場合●相続人でない者が横やりを入れてくる場合      
(相続人の配偶者、叔父叔母などが関与してくるのを排除したいとき)

★遺産分割協議の注意点★

相続人全員で行う

一人でも相続人が欠けた中で協議した場合、いかなる理由があろうと協議は無効です。やり直しになります。 ただし、全員が同じ場所に集まる必要までは要求されていませんので、協議内容の案を文書で作成して、これを個々に持ち回って同意を求め協議を成立させる方法があります。

遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議は法令上、協議書を作成することは要求していません。しかし、後々のトラブル防止のため遺産分割協議書を作成しておく必要があります。

実印を使用する・印鑑証明書を用意する

原則はどのような印鑑を使用しても構わないのですが、協議書の確実性を担保するために実印(印鑑証明書と同一の印)で調印するとともに、印鑑証明書の添付をするべきです。  
また不動産の登記手続きにおいては、実印での調印、印鑑証明書の添付がなされていない遺産分割協議書でなければ登記手続きをすることが出来ません。

素人判断しない

遺産分割協議を決して侮ってはいけません。話し合いしている中での言葉一つ一つを吟味して発言しましょう。当人同士の話し合いですから、時には感情的になってしまい、協議の進行停止→決裂という場合があります。 少しでも分からないことがあったり、不安な点があったらプロ(弁護士・司法書士)に相談することが大切です。  
インターネットや書籍だけでの調査で相続の手続きについて行動することは大変危険です。   

※私自身、専門外のことは自分での調査のほかにプロに相談します。     
インターネットや書籍だけでは情報不足に気づかされることが多いです。

手続きは迅速に!

協議が円満に解決したのに、協議書作成段階や協議後の事務手続きで手間取ったために、他の相続人が不信感を抱くこともあります。  
終いには相続人間で内容証明郵便のやりとりが行われ、終結したはずの協議が決裂に向かっていた事例を見たことがあります。

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司法書士 中川 剛洋

お客様の声にじっくりと耳を傾け、その問題の根幹(原因)を早期に把握することで、さまざまな問題解決に向けた最良の手段をご提案することをモットーにしております。
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